転職・退職には様々な理由がつきまとうと考えます。転職を重ねるたびに、過去の”転職・退職理由”は面接の都度に答えなければならないでしょう。
ここでは、「親の介護・病気」が理由としてあった場合、面接においてそこに言及することのメリット・デメリットそして…もし言及するとしたらどの様に伝えたら良いのか(回答例文)についてまで、いち人事としての見解を紹介したいと思います。
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【はじめに】そもそも、転職・退職理由って?
何故、転職したいのか?何故、退職するのか?質問として非常に似通っていますね。違いは、転職理由は、現職を辞めて次の会社(キャリア)に進む理由、退職理由は現職を辞める理由ということで、見ている部分・範囲がやや異なると考えます。
転職理由は…「仕事を辞めて新たな仕事に転職をする」その一連についての理由の説明を求められています。将来、先を見据えた質問となります。
退職理由は…「仕事を辞める理由」を求められています。どちらかというと会社を辞めることにした理由、現在ないし過去に遡っての理由を聞かれています。しかし…結局のところ行き着くところは、退職も転職をするために退職すると考えると、転職理由と一緒になります。
強いて言うなれば…
例えば…「より専門性を高めたいために現職を辞めて他社へ転職をする」等です。
・退職理由は転職という事象のあるなしに関わらない
例えば…「育児・介護に専念するために退職する」等はわかりやすい例です。
という違いがありうるのが相違点と考えます。
そして、これが転職の面接において企業から見た場合、結局行き着くところは”何故、弊社?”ということと考えます。また、企業の面接と転職・退職理由は、基本、前向きであることが望ましいと考えます。
いやいや、会社を辞めたいのは不満があるからだよ、なんてご意見、あると思います。
おっしゃる通りだと思います、事実、転職・退職理由の大部分は会社への不満(残業・給与・人間関係等々)からであることが多いと考えます。
ただ、それは、会社を辞めて転職をする”きっかけ”であり、実際に転職を考える際には高次の段階へ上がる必要があります。転職・退職を考えるきっかけは後ろ向きでも良い、ただ、それを昇華させていくことが重要です。
が、今回ご紹介する「親の介護・病気」はやむにやまれない事情かと考えますので、やや異なってくる部分もあろうかと思います。
転職・退職理由「親の介護・病気」を伝えることのリスク・デメリット
主に、「親の介護・病気」への対応の必要性が継続して存在している様な場合にリスク・デメリットがあると考えます。
その① 候補者が若い場合、面接官に信じてもらえない(疑われる)
もし、候補者(”あなた”)が若い場合に、「親の介護・病気」を理由にあげられると、面接官は直接的には言わないものの…「(ん?まだ親御さんもある程度若いはずなのに、そんな介護の必要性や何か助けが必要なほど重い病にかかるものだろうか…?本当か?何か隠したいことがあるのか?」と疑う可能性があります。
基本的に、面接官(会社)としてはまずは信じるしかない、且つ、採用選考において関係がないとされる事柄については聞いてはいけない決まりになっているため、あまり深く突っ込むこともできません。そのため、面接官は余計にもやもやを抱えることになります。
候補者(”あなた”)としては本当のことを話しているでしょうから、その様に思われることはとても不本意かと思いますが、リスクとしてないわけではありません。後述しますが、この様な疑念を抱かれない様な説明が求められることになります。
その② 状況が改善していない場合入社後の活躍を不安視される
さて、「親の介護・病気」に言及すると、応募先の企業によっては色々と心配をすることになります。
真っ先に心配に思うのは、その様な状況下で本当に会社に入って存分に活躍してもらえるのだろうか?ということです。
わかりやすく言えば…例えば以下です。
・この候補者の方は働き方に制限が多くあり、何かと家族の事情で休みが多く必要だったりするのではないだろうか…?
・転勤は対応できないのではないか?そうなると他の社員と不公平になる…。
・うちは転勤はないが、出張は比較的ある仕事だが…出張で数日なり1週間、2週間家をあけることは出来るのだろうか…?
と面接官の頭の中を”もし採用したら”という点でのリスクがいくつも駆け巡ることになります。
こちらも後述で言及することにはなりますが、状況が改善していない中でも問題なく働くことで出来る理由も添える必要が出てきます。
その③ また、同様の理由で離職に至ってしまうのではないか?と受け取られる
これは親の介護・病気に限った話ではありません。
経験者採用において、退職理由は必ずと言っていいほど聞かれる質問のひとつでありますが、それがどんな理由であっても、面接官は自社にきた後に同様の理由でやめてしまわないか?ということは気にしています。
ただ、こと「親の介護・病気」に関して言えば、候補者本人のことでないが故に、一体どの程度将来において同様の理由でまた退職になってしまうのか…というところが読みづらいということが、さらに面接官の不安を助長させてしまう可能性があります。
転職・退職理由「親の介護・病気」を正直に伝えることのメリット
既に、「親の介護・病気」が解消されているのであればあまり関係はありません。
その① 企業側もしっかりと受け入れに覚悟を持つことが出来る
企業側があらかじめわかっていれば、そこも含めてしっかりと覚悟を持ってその候補者(”あなた”)へ合格を出すということが出来ます。
つまり、もしかしたら、また再度何か同様の事情(親の介護・病気)で休む必要が出てきたりする可能性もあるかもしれません。そんな可能性も含めて、企業側から”あなた”を採用する、という覚悟をもって受け入れてもらえることになります。
その② 企業側もどんな配慮ができるかを検討することが出来る
企業においても、昨今では親の介護・病気という課題を抱えながら働いている従業員が多く存在しています。
そのため、あらかじめその様な事情があるということを知ることは入社後のケア、会社としてどの様なサポートが出来るのかを考えてもらえることにもなります。
採用時にはもしかたら候補者の事情も踏まえた業務アサインまで考えてくれるかもしれません。
その③ 何より、”あなた”も気持ちが軽くなる
隠しているといいことはありません…もし、また今後も親の介護や病気で再度対応が必要な可能性になる可能性もあるかもしれません。もし、介護を抱えながらの場合は、できる限り”話せる”会社に行くことがよいと考えます。
※ただ、正直、将来のことはわかりませんので、もし”今”事由が解消しているのであれば不要であればわざわざ面接で伝える必要はないと考えます。
転職・退職理由「親の介護・病気」に言及する際のポイント
大きく分かれるのは、「親の介護・病気」への対応が今後当面余程のことがない限りは不要な状態になっている場合と、「親の介護・病気」への対応が今後当面発生する・しうるという場合です。
前者の場合は、とにかくしっかりはっきり明確にその退職事由(親の介護・病気)は解消されたと述べることが大切です。
後者の場合は、誠心誠意その様な中でもどの様に活躍できるのかそして、将来的にはその事由が解消されるであろう可能性(期待)についても伝えることがポイントになると考えます。
その① 既にその状況は解消しているのであればそこは間違いなく言及する
対企業・対面接という観点で一番良いのは既に介護事由が解消された・されているということが伝えられることです。
もしその様に言えるのであれば、「また同様の理由で退職してしまう可能性があるのではないか?」「入社後にしっかりと活躍してもらえそうか?(残業対応・出張対応等出来るのだろうか?」といった企業側の心配・不安も一気に解消されることとなります。
その② 事由の解消の目処がたっているのであればそれを伝える
もし、それらの事由が解消はしていないものの将来的になんらかの目処が立っていればそれを伝えることも大切です。やはり、”介護”という状態を背負いながら働くということに対する会社の見方というのは厳しくなりがちです。
ここぞというときに残業をしてもらえないのではないか、遠くへの出張も対応してもらえないのではないか、何かと働き方に制限があるのではないか?ととにかく多くのことを心配します。
その③ ”介護”をしながらの転職(就職)である場合は、対応の詳細を説明する・自分の都合ばかりを主張しない
前述では、事由が解消している場合、事由が解消する目処が立っている場合…と見解をご紹介してきましたが、では、介護対応自体がなくならない場合にはどの様に伝えるのがポイントになるのか…これはなかなか難しいところではありますが、誠心誠意最大限の回答を心がけることになろうかと思います。
つまり、出来ること・出来ないことを明確にして、企業(面接官)に判断を委ねるということになります。
例えば…
等です。あとはもう委ねるしかありません。
本当に”あなた”しか対応できる人がいない場合はやむを得ませんが、できる限り一方的な主張にならないように心がけることは大切です。
前述とは真逆に、
なんてことになると、それら(残業・出張)を求める企業からはそもそも求人対してアンマッチと判断されます。それらが叶えられる案件をしっかりと見定めて応募する必要が出てきます。
転職・退職理由「親の介護・病気」の伝え方・回答例文
その① 既にその状況は解消している場合
この場合は基本的には自信をもって正直に答えれば良いと考えます。
※親御さんが既に他界されたことは非常に残念ではありますが…企業(面接官)としては完全に腹落ちするでしょう。
※強いて言えば、「またその状況に戻ってしまうのでは?」と懸念を出来るだけ抱かれない様に伝えることが大事かと考えます。
その② 事由の解消の目処がたっている場合
※介護という観点では、兄弟・姉妹が助けてくれる目処がたったや、施設への入居目処がたったなどが面接官を安心させられる情報となると考えます。
その③ 事由を抱えながらの転職(就職)である場合
※事由が解消されていない場合、その様な最中どの様に仕事と介護を自身(候補者)なりにコントロールしようとしているのかを説明し、面接官に納得してもらう必要があります。
転職・退職理由「親の介護・病気」が”現在進行形”で対応が必要な場合はどうするか?
つまり、目下、親の介護・病気に対応するために現職からの退職、転職先を探しているという状態です。この様な場合は、転職先も慎重に検討する必要があります。
個々人の事情に合わせて勤務が出来る…その様な仕事はそこまで多くはありません。もしかしたら、必要な介護・ケアのレベルによっては「正社員」という雇用形態以外ももちろん検討に入れる必要もあるかと考えます。
派遣社員・契約社員等も検討し、しっかりと時間管理が出来る働き方をスコープに入れる必要もあるのではないかと考えます。
現職でまずは介護休職の取得の可能性などを確認し、まずはしっかりと介護に注力をする中でその後の自身のキャリアについて考えていくのが良いのではないかと考えます。
早まってすぐに退職を選ばないようにすることをお勧めします。
また、万が一、職歴にブランクが出来てしまったとしても”介護”は比較的企業からして受け入れやすい理由となります。ブランク期間が長くなればなるほど、仕事に復帰した際の”立ち上がり”を不安視されることにはなりますが…。
親の介護・病気をみつつ、自身のライフプラン(キャリア含む)を考えなければならないため非常に大変かとは思いますが、この様な場合はとにかくどんなオプション(選択肢)があるかを全て俎上にあげて整理して、何のためにどの手段を活用するかを中長期的なスパンで考える必要があります。
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さいごに
現在進行形で「親の介護・病気」が理由で退職・転職に至っている皆様におかれましては大変なご苦労をされたことと思います。
企業側としても様々な転職・退職理由の方とお会いしますが、もちろん、その介護事象が既に解消されていれば何も問題はないのですが、もし、それが現在進行形である場合は事情が事情であるが故に非常に丁寧なコミュニケーションが必要となります。
所謂、巷に溢れる求人の多くが介護をしながらの働き方ということを想定していないために転職は苦労を極めるのではないかと考えます。
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