HR|騙し合い?面接で嘘はあり?蔓延る嘘・誇張・誤魔化しをいち人事として考える

就職活動(新卒)・転職活動、いずれの面接においても、様々な種類の問いが面接官から投げかけられます。

「弊社は第一希望ですか?」
「全国転勤に支障はありませんか?」
「なぜ、弊社を希望するのですか?」
「出張が多い業務ですが大丈夫ですか?」
「何故、この職種を希望するのですか?」
「弊社以外で受けている企業はどこですか?」
「前職を辞めた理由はなんですか?」
「期待する年収は?」

とにかくたくさんです。さて、これらについて、出来れば”嘘”はつきたくない、けどちゃんと内定は欲しい、と感じている方も多いのではないでしょうか。いち人事として、面接での”嘘””誇張””誤魔化し”etc.について見解をご紹介します。

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もちろん、そもそも全くの”嘘”はダメ

全くの嘘はもちろんダメ。それは企業側も候補者側も双方です。

候補者側からの”嘘”としてありうるのは過去の経験における嘘でしょう。学生であればありもしないエピソードをでっち上げるや、経験者・新卒問わず何らかの所有している資格系での嘘も全くの嘘にあたるでしょう。

特に、経歴や資格における嘘は後から発覚した場合には”懲戒解雇”になってもおかしくない程に”ダメ”な嘘の一種です。

企業側であれば、給与水準の嘘、勤務地についての嘘、等。候補者に大きく影響を与える嘘(主に労働条件に関わること)は極めて問題があるでしょう。もし、裁判になった際に企業側が負ける(賠償責任を負う)ことだってあるでしょう。

”嘘”と”誇張(盛る)”は似て非なる

何においても”嘘”はダメという意見の方もいるでしょうか。”嘘”にもラインがあると考えます。それがこの”嘘”と”誇張(盛る)”の違いと考えます。

事実と異なること、0を1にするのは”嘘”だが、話を魅力的にすること、7が8であるかのように”盛る”ことは必ずしも即座に断罪されるものではないのではないかと考えます

。難しいのは、”嘘”と受け取るか”誇張”と捉えてくれるかは受け取り手次第ということもありますが。

候補者側の”盛り”エピソードとして、何らかの”プロジェクトなり”イベント”を引っ張りました!というものがあります。これは”盛り”エピソードの一種のケースとしてあげられます。

引っ張ったからにはリーダーを担った?と思う人がいるかもしれませんが、引っ張るのはリーダーだけではないですし、候補者自身が引っ張ったといえる観点があればそれは事実の範囲と考えます。

他にも例えば…「Q:イベントは喜んでもらえましたか?」
→A1:はい。喜んでもらえました。
→A2:はい。とても喜んでもらえて、大盛況でした。

この様な場合は、候補者自身の主観も入っています。A1、A2のどちらでも許されそうですよね?”正確なファクト(事実)”を求める面接官は、「何をもって大盛況だったと言えるのですか?」など聞いてくるかもしれませんが…。

その場合は、アンケート結果やお客さんからのリアルな声などを引き合いにしっかりと述べることが出来ると良いと考えます。

企業側だって”盛ります”、例えば経験者採用の合格者へのオファーの際、理論年収を見せる時、試行錯誤して数字を捻り出している企業だってあります。

今現在の年収はXXX万円ですが、将来的に扶養家族が増えたり、もし残業が平均◯◯時間/月であれば、家族手当に残業手当に、合わせて年収は800万は理論上期待できます!なんてのも”盛り”の一種ではないでしょうか。

”嘘”と”誇張(盛る)”とはまた異なる”誤魔化し”

誤魔化しは”嘘”なのか?という日本語的な話もありますが、”嘘”は「事実に反すること」、”誤魔化し”は「自分に都合が悪いことを隠すこと」です。

さて、この”誤魔化し”も面接の中では日常茶飯事に行われています。それはもちろん、候補者も企業側も都合が悪いことは出来れば隠しておきたいです。

例えば…学生であれば、浪人・留年の理由、それが”さぼり””怠け”の原因であった場合は、誤魔化したい、体裁を取り繕いたいと考え、別のそれらしい理由を述べる人も多いのではないでしょうか。

部活に力を入れていて留年した、これは本当の場合と誤魔化しの場合がありえますね。転職者であれば、ネガティブでしかない転職理由をポジティブな理由に取り繕うなんてこともしている人もいるかもしれません。

企業側の話にも幾らでも誤魔化しは存在します。典型的なのは残業時間でしょうか。会社の従業員の平均残業時間は20時間と謳っていても、実際には事務職・総合職間での偏りで総合職の方が忙しかったり、管理職はいくら労働をしていてもその時間はゼロカウントされていたり、とはっきりいって実態を表していないケースがあります。これはある種、”誤魔化し”と言えると考えます。

候補者としても企業としても、都合が悪いことは出来るだけ隠しておきたいわけです。そうなると、取り繕う、つまり不都合なことのうわべを飾って誤魔化すこととなるわけです。

何故、”嘘””誇張””誤魔化し”が蔓延るのか

何故、”嘘””誇張(盛り)””誤魔化し”が面接の中で蔓延るのか?それは、企業も候補者もお互いが”恐れているから”と考えます。

候補者側は、企業により良く見られたい、そして内定が欲しい、つまり、落とされることを恐れています。

企業側はその候補者に来て欲しいと思っていれば、企業の悪い側面は見せたく無い、つまり、辞退されることを恐れています。

その様にお互いが恐れ合っていて、自分達のことをそれぞれより良く見せたい思っていることとなります。

※異論はたくさんあるでしょう。完全に本音ベースで包み隠さず話してくれる企業もあるでしょうし、正直に選考に臨んでいる方もいるでしょう。

※恐れていると表現しましたが、恐れとは関係なく、”目的”(候補者:内定を得る、企業:入社に繋げる)を達成するための手段とも言えます。

面接は、設問によって手段(返答の仕方)の使い分けが必要

”嘘””誇張(盛り)””誤魔化し”から”本音と建前”へ

”嘘””誇張(盛り)””誤魔化し”という手段はやや転ずる必要があるでしょう。それは…

本音と建前の使い分け

企業側と候補者の思惑が複雑に面接という場において交錯することになります。これは各質問においてそうと言えます。何の質問に対して”本音”ベースで答え、何の質問に対して”建前”を使うのか、です。

これもまた可笑しなと感じる方も多いでしょう。結局は、”建前”(≒”嘘””誤魔化し”)が必要なのか…と。実際には、もちろんその意味するところは異なります。おさらいですが、意味はそれぞれ以下です。

:事実でないこと。また、人をだますために言う、事実とは違う言葉。偽(いつわり)。
https://kotobank.jp/word/嘘-440021

誤魔化す:本心を見やぶられないように、話をそらしたり、でまかせを言ったりして、その場やうわべをとりつくろう。https://kotobank.jp/word/誤魔化す-504336

建前:対外的に表現を穏やかにしたり、あからさまに批判を受けそうな個所を隠したりといった外部向けに表現を制限する。その結果として表にあらわされるのが建前。https://ja.wikipedia.org/wiki/本音と建前

つまり、言うなれば、これは処世術です。

”本音”も言い方を間違えれば相手に本意でない捉え方をされますし、”本音”は表現次第で角がたち、相手を不快にさせます。時と場合によっては”建前”も必要だということです。物もいいよう、と言うことです。

具体例:「弊社は第一志望ですか?」について

さて、典型的な質問はこちらです。そもそも何のために企業はこれを聞くのかですが、”内定を出したら、本当に来てくれるかどうか”つまり、自社への志望度合いを知りたいためです。

この質問に対して、第一志望でない場合、もし”本音”で答えたらどうなるでしょう?

「御社のことは強く志望しています。しかし、第一志望ではありません。」
「大変失礼な発言で恐縮ですが、第一志望ではありません。」
「申し訳ございません。第一志望ではありません。第三志望となります。」

つまり、その候補者は「志望度が高い企業から合格が出たら、辞退します」と言い切っているに等しいこととなります。それはそれで当然とは考えます。

しかし、そうなると、企業も一気にトーンダウンするかもしれません。もし、他に同等の能力・同等の優秀さをもち、「御社が第一志望です!」と熱意を兼ね備えた合格を出したら確実に来てくれそうな期待が出来る候補者がいたらどちらを優先するでしょうか?

そちらを優先されても構わない!という覚悟が必要かもしれません。

さて、こうなると、安全を取りたいと思うと、”建前”が必要になってきます。

「叶うのであれば是非、御社にと思っておりますが、選考を受ける身として…御社含め複数社を第一志望群として考えています。」

※YES/NOの後には、何故そうなのかの理由もしっかりと付け加えるのが望ましいです。そうすることで面接官の納得度合いが増します。

具体例:「全国転勤は出来ますか?」について

これは面接において数ある質問のうち比較的、正直ベースで答えた方が良い質問の一つと考えます。”転勤”は基本的にその発令権限は会社側にあり、従業員側には余程の事情がない限り断る権利はありません。

この質問に対して、本当は転勤が出来ないのに、”嘘”の回答、”誤魔化し”の回答をすることは後々双方にとって不幸になる可能性があります。

転勤が出来ない・したくないのに、もし”嘘”をついたり、”誤魔化し”をしたら…

「転勤は全く問題ありません。日本全国どこでも可です。」
「転勤は問題ありません。」
「はい。出来れば、東京に居を構えていたいですが、転勤も可能です。」

企業によりますが、”転勤”は起こる人には起こります。いざ入社後、転勤の辞令に直面してから、「転勤はできません」では双方が不幸になります。

かと言って、「転勤はできません」と言い切ると合格が遠のく可能性も高いです。そうなると、やはり、上手く答える必要が出てきます。

「出来れば一都三県での就業を希望しますが、転勤は状況次第とはなりますが可能です。」
「はい。当面は家庭の状況的に転勤は困難ですが、もし状況が許せば転勤も是非と考えております。」

企業が転勤という制度について転換をはかってくる様子もありますが、まだまだ現在は転勤ありきの企業も多いでしょう。

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実は本音(第一志望ではありません!)を言っても合格は出来る

等身大(本音)のままでも合格を手にすることは出来ます。

「第一志望ですか?」に対して本音で答えてたら全部面接落ちたなんて話を聞きますが、申し訳ありません、それはその方の何かが企業の採用要件を満たしていなかった、その方が何らかの点でそれぞれの企業とマッチしなかった、他により良い候補者がいた、等々ということに他ならないと考えます。

参考例1(新卒)

企業
弊社への志望度について教えてください。
あなた
はい。もし、企業に就職するとしたら御社と決めています。しかし、一方で今現在、国家公務員への夢も捨てきれておりません。そのため、大変失礼な話ではありますが、就職活動を終了した後、国家公務員試験も受けたいと考えています。
つまり、この方は「国家公務員試験に受かったら、国家公務員になる」と近しいことを言っているわけですね。しかし、面接を通して人となりもよく、非常に優秀な人材と判断したので合格にしました。

参考例2(転職)

企業

弊社の他にも受けている企業はありますか?その中で弊社への志望度はどの程度なのでしょうか?

あなた
はい。御社の他に3社ほど最終面接を控えております。メーカーであれば間違いなく御社と思っています。しかし、一方でIT業界も強く志望しております。大変失礼な話で恐縮ですが、業界としてはITの方が志望度がやや高いところではあります。

合格を出したわけですが、企業としては当然、合格を出した後に”惹きつけ”を行うこととなります。つまり、自社への志望度をあげるためのアクションをとります。

それは、処遇の説明、そして、この場合はメーカーと言えどITとは実は密接に関わっていて、むしろ自社であればものづくり×ITに携われる等魅力を説明。もし候補者の方に入ってもらったらどんな業務に携わってもらいたいと思っていて、どんなことを期待しているのか、これまでの経験・スキルのどんなことが活かせるのか…等々です。

企業がその候補者について優秀、自社に来て欲しいと思えば、企業側から候補者へ自社の魅力をPRし志望度を上げてもらうアクションをとります。

理想は、”本音・建前”なく、”本音”一本で行ける世界

企業も候補者も上手く所々で本音と建前を使い分けるのが、今の落とし所と考えます。

ただ、理想はお互いが本音を言い合って、その結果マッチすることとは考えます(本音も伝え方というのはありますが)。

しかし、このためには、企業と候補者のお互いが本音を伝え合ったその結果アンマッチとなりえることをしっかりと覚悟することが必要と考えます。また、表面的な言葉ではなく、その裏にある”意図””理由”までを汲み取る必要があるでしょう。

お互いが本音ベースで会話しあった結果、合格・入社に結びつくことことが双方にとってより良い結果にもなるでしょう。候補者の方の入社後の活躍がより一層期待できるのではないかと思いますし、入社後のミスマッチも格段に減るのではなかろうかと考えます。

さいごに

面接は本当に疑い出すとキリがないですね。企業・候補者がお互い腹の探り合いになっている様に感じる瞬間もあります。

候補者側からの逆質問に対して企業側が回答を濁す場面も多々あります。

Q「繁忙期の残業時間はどの程度でしょうか?」
→A「そうですね。忙しいですね。ただ、家で家族とご飯は食べられるくらいです。」

Q「35歳程度での年収はどの程度期待できますか?」
→A「一概には言えませんね。その人の能力によりますので。」

なんて、のは濁しているのではと思ったりします。Transparencyと言いますが、もっと”透明性”を持った形でまずは企業から様々な情報を積極的に開示していき、候補者にも”本音”で話すことが良い結果につながるということを腹落ちしてもらって、双方腹を割って話せる様になるのがいいですね。

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~余談~

第一志望かどうかを確認する企業がおかしい。

企業は「第一志望ですか?」なんて質問はやめたら良いだけなんですよね。面接でも”良い質問”と”悪い質問”があり、「第一志望ですか?」は悪い質問の一種なのではないかと考えます。

第一志望かどうかを確認したいその意図は十分に理解できます。しかし、実態としてその質問は候補者に無用なストレスを強いていますし、結局、”嘘””誇張””誤魔化し””を引き出しているケースがほとんどで全く意味をなさない質問になっているのではないかと考えます。

いち人事としては”第一志望かどうか”の確認はしていません。志望度の確認のみをしています。志望度が高そうなのか、低そうなのか。もし、企業から見て候補者が欲しい人材であればその志望度を高めるための努力を企業なりにします。

また、候補者は「第一志望群です」って言えばいいんだと思います。第一志望が複数個あってはいけないなんて決まりはないんです。

内定をもらったら「行きます!」と言える会社だけを受ければ良いのではないでしょうか。優先順位を付け出したらきりがありません。英語では、「on of the best」という表現がありますが、最初聞いた時は”ベスト(一番)”なのに”その中のひとつ”ってどういうことだ、と思いましたが。行きたい会社は全部、one of the bestということで良いのではないでしょうか。つまり、第一志望郡です(自分が最も行きたいと思う会社の一つです)ということですかね。

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