出向、人によっては聞きなれない言葉かもしれません。キャリアを通して無縁で終わる人もいるでしょう。そんな出向だからこそ、出向って一体何?と思う方も多くいるのではないかと思います。
自分の周りで出向になる人がいれば、いつかは自分も出向するタイミングも来るかもしれません。もしかしたら「出向」の打診を受けて初めて出向って何だろうと、気になり始める方もいるかもしれません。
ここでは、そんな出向について、特に「出向は退職扱いになる?」と言う心配、そして退職扱いになる「出向」についてご紹介します。
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出向は「在籍出向」と「転籍出向」2パターン
話を進めるにあたって大切なのはそもそも出向とは何なのかについて知ることと考えます。「出向」とは、人事異動における異動事象の種類の一つとなります。出向にも実は大きく分けて二つの種類があります、それは、
2:転籍出向
の2つです。
両方とも”出向”がついており紛らわしさがありますが、その意味は実は似て非なるもので、大きく異なります。
そのため、「在籍出向」を「出向」、「転籍出向」を「転籍」と呼びそれぞれ異なるものであるということをより明確にし、言葉を使い分けていることも多いです。(※ここでもそのように表記する部分があります。)
在籍出向とは
基本的に、多くのケースで出向が意味するところは「在籍出向」、つまり、現職の会社に籍は置きつつも、現職-他社間にて結ばれる出向契約に基づき、他社に就業しそこで他社の一員として業務を行うことを言います。
雇用契約も在籍元の会社と結びつつ、出向先とも結ぶこととなります。ただ、”出向先の社員”という扱いにもなるわけではありますが、出向先では、プロパーの社員と出向受入の社員を明確に分けています。
本籍は出向元となり、指揮命令権が出向先にあるということになります。尚、この「在籍出向」の場合は、出向元に戻ることが前提であり、出向の期間が定められている場合がほとんどです。
転籍出向とは
「転籍出向」とは出向元と従業員の間で結ばれていた労働契約を解き、出向先企業と新たに労働契約を結ぶ形態となります。
在籍出向の時は、出向元との雇用関係は継続していましたが、こちらでは出向元との雇用関係はなくなり、出向先との雇用関係のみになります。
この「転籍出向」の場合は、完全に先方企業へ籍が移るため、戻らないことが前提であるケースが多いでしょう。
出向元・出向先の関係
尚、出向元と出向先の関係性は様々です。
②グループ会社⇆グループ会社への出向(又は転籍)
③自社⇆他社への出向(又は転籍)
大きく分けてこの3つかと考えられます。※転籍出向において多いケースは、親会社から子会社への転籍出向です。
在籍出向と転籍出向は大きく異なる
在籍出向は、従業員の根幹に関わる規則は出向元が適用されることが多い
在籍出向は、大元の”籍”は出向元にあります。この場合は、いくつかの”根幹”となる取り扱いは”出向元”に準じて取り扱われることが多いでしょう。
例えば…給与・賞与です、これらについては、在籍出向の場合は出向元での規則に従い支給され、年収が保障されることが多いと考えます。
例えば…退職金です、こちらについても在籍出向の場合は、基本的には勤続年数も出向元で通算され、その間の退職金も積み立てられるものと考えます。
例えば…従業員の懲戒解雇の権限です、何か問題があった際に出向先の権限のみをもってして従業員の懲戒解雇を行うことは出来ません。(とは言っても、出向先でそれほどの問題を起こせば、出向元としても権限を行使し何らかの処分をするとは考えますが。)
もちろん、その他の就業(労務提供)にあたって従う必要のある各種規則は出向先に従うこととなります。具体的には、始業・終業、休暇・休日、等々になります。
転籍出向は、全ての規則を転籍先に従うこととなる
これまで述べてきた通り、転籍は、転籍元との労働契約は解消され、転籍先と新たに労働契約を結ぶこととなります。そのため、”元”会社の規則は一切適用されない、関係ないものとなります。転籍先の規則に全て従うこととなります。
”退職扱い”になる「出向」は「転籍出向」
これは前述で言及した「転籍出向」の場合に退職扱いとなります。転籍出向では、転籍元(出向元)での雇用関係を終了、つまり退職した上で、新しく転籍先(出向先)との雇用契約を結び直します。
”退職扱い”と表現していますが、実際は”退職”そのものと言って過言はありません。
また、転籍出向においては、在籍出向を一定期間挟んでからの転籍出向と、在籍出向を経ずに即時に転籍出向の2パターンが考えられます。
”退職扱い”になる転籍は従業員(”あなた”)の同意が必要
繰り返しになりますが、転籍は退職が伴います。そのため、基本的には従業員の同意が必要です。
この際、口頭・メールベースでの”同意”を持って転籍をおこなっている企業も存在するかもしれませんが、通常のケースでは、「転籍同意書」なるものに同意の署名を求められるでしょう。
何故同意が必要になるのかというと、これは転籍によって、雇用先が変わるのはもちろん、様々な労働条件についても変更となるためです。
そのため、転籍同意書には転籍先の労働条件なども記載がされ、その説明、従業員(”あなた”)の同意の上で実行されます。
つまり、転籍は拒否が出来る、とも言えます。
転籍を断る・拒否することのリスク
転職を拒否すれば現職に籍を置き続けられるため、今の現職処遇水準を保てる可能性は高いです。しかし、それ以上にリスクもあることをご理解頂けたらと考えます。
もちろんあくまで”リスク”でしかありません。下記は原籍が会社として”あなた”を”排出”したいと思われている場合に発生しうる可能性です。
現職でのキャリアアップが望めなくなる可能性。
例えば、親会社から子会社への転籍オファー等の際、これは暗に親会社での今後の昇格・昇進は望めないという意味が含まれているケースがあります。
在籍元として対象者の活躍の場が今以上にないと判断されているが故に転籍の打診をされているケースも多いと考えます。
結局何かしらの異動が起こる可能性。
”あなた”に「転籍」してもらいたい≒現在のポジションから異動させたい、と捉えることもできます。
そのため、転籍を断ったはいいものの…結局は、どこかへ転居を伴う異動(転勤)を命じられたり、どこか他社へ出向を命じられたり、転居は伴いわないまでも閑職へまわされたりとする可能性も十分にあります。
継続的に打診され続ける可能性。
一度断ったはいいものの…二度、三度と数ヶ月おきに打診され続けることも可能性として考えられます。
その際は、恐らく現職での今後のキャリアが極めて狭いことも示唆されるかもしれません。
一度断ればそれでおしまい!となればいいのですが、そんな上手く行かずにしつこつ何回かにわたって打診され続ける可能性は否めません。
”退職扱い”の転籍出向は戻ってこれない?
転籍出向のその性質からして、基本的に転籍出向は戻ることを前提とはしていないと考えます。
しかし、だからと言って、絶対に出向元に戻ってこれないのか?と言われると必ずしもそうではないケースもあります。
これは企業によるところではありますが、密接に繋がり合う、グループ会社間の異動(転籍)で稀にそのような事象が起こります。ただ、レアケースであるため、期待ができるものではないことを予め認識いただく必要があります。
例えば…親会社にて課長を担っていた人が子会社に出向の後、その子会社の役員から買われ転籍、子会社側にて部長に昇進。数年後、その役員もいなくなり、親会社から逆出向にて呼び戻され、その後親会社へ転籍。なんてケースです。
自ら何とかして戻れる!という訳ではないため、事実上戻ることは難しいとは考えます。
転籍のメリット・デメリットは?
一般的に、”社格”が上がる転籍はメリットが多く、”社格”が下がる転籍はデメリットが多いものと考えられます。そのため、想定としては、親会社→子会社への転籍ケースを念頭に置きつつ以下メリット・デメリットをご紹介します。
これらのほとんどは、転籍を打診された際の説明内容をしっかりと聞くことで、その転籍が自身にとってどのようなメリットとデメリットがあるのかは判別出来ると考えます。
転籍で考えうるメリット
職位(役職)が上がる可能性
特によく目にするのは、親会社から子会社へ従業員を”輩出”するような形での転籍の場合です。この様な場合、親会社で部長であった従業員を子会社に転籍させ子会社では本部長のポジションに置く、といったケースです。
処遇(給与)が上がる可能性
これは前述の職位(役職)とセットであることが多いですが、原籍で課長だった人が、転籍先では部長で受け入れてもらえる。なんて場合は、給与が上がる可能性があります。
もちろん、ケースとしてレアとはいえ、子会社から親会社への転籍などの場合は職位(役職)が一緒でも給与はあがる可能性があります。
キャリアの肥やしになる可能性
入社した会社で勤め上げたい思いのあった方にとっては転籍は不本意なものかもしれません。しかし、グループ会社であっても”他社”を経験するということはキャリアの肥やしになるともいえます。
※私自身は、”在籍出向”をした経験がありますが、出向元にいては経験出来なかったであろう様々な業務に従事をすることが出来、人事としての経験の幅も広がり、深さも深まったと感じます。
転籍元会社の人脈を活かして活躍できる可能性
”他社”の出身者というのはやはり企業によってはその数は少なくやはり希少な存在ともなり得ます。
このような場合、転籍先の会社で、その従業員(”あなた”)は大切にされる可能性があります。また親会社–子会社、グループ会社間などでの転籍の場合は、元会社での人脈を存分に活かせることも多く、活躍できる可能性もその分高まります。
転籍で考えうるデメリット
処遇(給与)が下がる可能性
転籍で多く目にするのはやはり、給与が下がってしまう転籍です。
子会社から親会社への転籍などは例外ですが、親会社から子会社への転籍の場合は往々にしてあります。前述では、親会社(課長)から子会社(部長)へ転籍…と紹介しましたが、必ずしもそのような転籍ばかりではなく、親会社(課長)から子会社(課長)への転籍といったケースも当然多くあります。
こうなると、純粋に給与が下がるという可能性は十分にあります。
ステータスが下がったと感じる可能性
これはネームバリュー的な意味も含みますが、親会社に勤めていた際には、やはり”親会社”なりのステータスがあったものと考えられます。
しかし、これがグループ会社への転籍となることで、その従業員(”あなた”)は最早、親会社の従業員ではなく、グループ会社社員となります。
安定性が下がる可能性
親会社から子会社への転籍などの場合は、企業としての安定性が悪くなるかもしれない可能性は高まります。それは転籍先の事業・経営状況的なものはもちろん、立ち位置として、親会社からの売却の目に遭う可能性などがあげられます。
転籍が不本意な場合は転職もあり
転籍が不本意な場合は、転職もありです。転籍を打診される場合は、転籍後の処遇が好転しない限りは基本的には企業からある意味その程度にしか取り扱ってもらえなかったとも言えます。
転籍先の仕事に”やりがい”を見出せ、会社生活が今よりも良いものになりそうな可能性があれば一度まずは転籍を受けてみるのもありですが、そうではなかった場合は、転職も選択肢に入れて良いと考えます。
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転籍は完全に従業員(”あなた”)の所属が変わる異動事象です。新卒で入った会社であればその会社を”転籍”という形で去るのは残念な気持ちにもなるかもしれません。
しかし、転籍は会社の優しさとも言えます、アメリカ等欧米では通常解雇となるような事象が、日本ではそのように簡単に解雇はできないということもあり”雇用”を前提に考えた結果、在籍出向・転籍出向というものも存在していると考えます。
転籍、色々な受け止め方が出来ると考えますが、選択権は”あなた”にありますので、じっくりと考えてご決断いただくのが良いと考えます。
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