企業にもよりますが、4月入社式そこから数週間~長い企業だと数ヶ月は教育・研修期間、そしてその後いよいよ配属されOJTの中で先輩社員や上司に指導してもらいながら徐々に仕事が始まっていく。とそんな感じかと思います。
しかし、理由は様々でしょうが、入ったは良いもののいざ仕事が始まってみるとやはり思っていたのとは違った、どうしても辞めたいと思うまでに至る方も当然出てくると思います。
とは言っても…まだ会社に入って1年もたっていない、本当に転職出来るの?何かデメリットは?メリットは?流石に、1年目で退職・転職するのは甘えなのか?という疑問について企業のいち新卒・中途採用担当者としての見解を述べたいと思います。
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新卒1年以内での転職は出来るのか?
ただし、いち人事としてはその位置付けは転職というよりも、再就活というイメージに近しいと考えます。
いくつかの大手企業においては、既卒を対象として、職歴の有無を問わず、新卒予定者と同等の条件で採用を希望する人も応募可と謳って新卒採用活動を行なっています。
また、1年以内の転職は「第二新卒」としても位置付けられます。(第二新卒とは一般的に新卒で会社に入社した後3年以内の25歳前後をさします。)
そのため、企業側としても経験者を採用するというよりは、新卒に近いポテンシャルを見ての採用という位置付けになると考えます。
新卒1年以内の離職率は?
厚生労働省 新規学卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者の状況)(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00003.html)によると、
1年目 | 2年目 | 3年目 | 合計 | |
大学卒 | 11.6% | 11.4% | 9.9% | 32.8% |
短大卒 | 17.7% | 13.3% | 12.0% | 43.0% |
高校卒 | 17.2% | 12.3% | 10.0% | 39.5% |
大学卒の3年以内離職率が高い業界ワースト3
2位:46.2% 生活関連サービス業、娯楽業
3位:45.6% 教育、学習支援業
となっています。
大学卒の3年以内離職率が低い業界トップ3
2位:14.0% 鉱業、採石業、砂利採取業
3位:24.8% 金融・保険業
となっています。
1年以内で転職したいと思っても決して珍しくありません。むしろ、これは離職率なので1年目で辞めたいと思っている人は20%~30%程度いてもおかしくありません。
石の上にも三年すら最早古いということです。
新卒1年以内で転職した人「辞めてよかった」が9割!?
ビズヒッツは4月5日、「転職理由に関する意識調査」の結果を発表した。調査は3月11日〜25日、新卒1年未満で転職した経験…
こちらのサイトを参考にご紹介します。
この記事によると、
「新卒1年未満で転職してよかったですか?」と聞いたところ、実に9割以上の人が「よかった」(91.4%)と回答。その理由を尋ねると、「転職先は自分が携わりたいと思っていた職種で、辞めて正解でした」「第二新卒で大手企業に転職できたので、早めに辞めて正解だったと思う」「ストレスがなくなったので、体調が復活した」といったコメントが並んだ。”
引用:https://news.mynavi.jp/article/20210407-1866216/
とのことで、やはり、1年以内でも退職・転職したいほど不満・不足のある現職から、新たなより良い環境へ移ることができ、それらが解消出来たことが転職後の満足感にもつながっているものと考えます。
新卒1年以内の退職・転職活動におけるメリット
人によって退職・転職によって達成したいことは異なるでしょう。メリットはその”達成したいこと”を達成出来ることがメリットです。
メリット① 自分にとって価値が少ないと感じる時間を減らせる・より価値を感じることにシフト出来る
全員に共通する一番大きなメリットはやはりこちらです。
理由は様々でしょうが、集約されるのはここと考えます。仕事内容にミスマッチがあったのか、職種にミスマッチがあったのか、人間関係なのか、1年以内で退職・転職をしたいと思う理由は様々かと考えますが、少なくとも”現職でこのまま過ごしたくない”と考えているのではないでしょうか?
”現職でこのまま過ごしたくない”と感じているのであれば、今過ごしている時間の”あなた”にとっての価値は高くない(低い)と考えます。
そのため、今過ごしている時間がより良くなる可能性のある転職は、今後の仕事人生においても、プライベートにおいても人生の質が高まるかもしれないという点でとても有意義なものになります。
メリット② 1社目での経験(失敗・ミスマッチ等)を踏まえてより満足できる2社目を選べる
新卒での就職活動は学生の頃に行うもので大体の人が、右も左もわからず探り探りで行なっていたものと考えます。
しかし、2度目の就職活動、しかも1度目(新卒就職活動)からそれほど期間も経っていないということになりますので、就活の感覚をもちつつ、社会とは・会社とはと言うものの感覚ももち始め、新しい視点で就活をリスタートすることができます。
※但し、新卒の時の就職活動と、社会人になってからの転職活動は異なる部分がありますのでその辺りは注意する必要があります。この辺りをしっかりと踏まえるためには転職エージェントの活用がおすすめです。
メリット③ 不健全な環境から抜け出すことが出来る
働き方がブラックな環境であったり、コンプライアンス的にブラックな仕事の仕方をさせられていたり、サービス残業を強いられていたり、仕事を全く教え得てもらえなかったり、ハラスメントが強烈だったりと、色々な意味で”不健全な環境”と総じて表現しています。
この不健全な環境から抜け出すことは、心身の健康にとっても非常に大切なこととなります。このような場合はできる限り早くに転職を実現させることをおすすめします。
メリット④ 経験ではなくポテンシャルで見てもらえる
1年目ですので、企業としても”あなた”に業務経験を求めるわけには行きません。そうなると、新卒採用と同様に、自社にきてから活躍してもらえそうかどうかの”ポテンシャル(可能性)”で判断をせざるを得なくなります。
そうなると、新卒の時の就職活動時同様に、企業からは大学・大学院での取り組みについても話が及ぶことになります。
学生時代の所謂、力を入れて取り組んだことや、達成したことなどについても聞かれることと思いますが、既に一度新卒の就職活動時代に散々考えに考えて対策をしたことを再度活用出来るため、勝負がしやすいと言う側面もあると考えます。
新卒1年以内の退職・転職活動におけるデメリット
デメリット① 業務上アピール出来る経験がない
一般的には、1年以内の退職となりますと、タイミングによりますがほとんどが入社後の導入教育で実際の仕事をしたのは数ヶ月です、そしてその仕事も先輩社員や上司と一緒に教えてもらいながらやっていました…ということが大部分になるかと思います。
(もちろん、いきなり現場に出されて全部一人でやらなければならなかった、なんて環境が理由で退職・転職を検討している人もいることは承知です。)
そのため、基本的に業務経験からのアピール出来ることが極めて少なくなってしまう。ということはデメリットのひとつにあげられます。
しかし、前述のメリットの通り、1年以内の転職者ともなると企業としては基本的には新卒とほぼ同等ですので、”ポテンシャル”で見てもらえると考えます。
とは言っても、入社後数ヶ月の期間であっても、自分なりに何をしたかは話せるものを1つ、2つはしっかりと考えておきましょう。
・新人教育期間中に同期を積極的にリードして、同期の結束を強くした。
社会人の基本として挨拶はもちろんですが、懇親会の企画や、積極的なコミュニケーションをはかりました。
・新人教育期間では積極的に不明点を確認し、”わからないまま”放置しないように心がけた。
また、同期に先駆けて業務に必要な資格の取得をしました。
・配属後は、新人として報・連・相を常に意識して、仕事を進めました。
等々
デメリット② 就職後の処遇が”新卒”になる可能性
前述の通り、ほとんどが教育・研修期間で業務経験も十分でなかった際、次の転職(再就職)先での給与が、”新卒扱い”となってしまってもおかしくありません。
タイミングによっては、社会人2年目であっても転職先企業ではその企業の新卒1年目の給与となってしまう可能性も否めません。
1年以内での転職ですので、転職先で2年目であってもその企業の新入社員同様の給与になるというのはデメリットという考え方もありますが、甘受して頂く必要があるとは考えます。
デメリット③ 企業から穿ったみられ方をする可能性
・忍耐力が足りないのではないか
・逃げ癖があるのではないか
・またすぐ辞めてしまうのではないか
・何か現状を打破する自分なりの対処はしたのか?ただの逃げではないか。
・色々なことに不満を感じるクレーマー気質なのではないか 等々
企業から穿ったみられ方をする可能性があります。ただこれらは面接を通して払拭していくことができます。しっかりと面接対策を行うことで対応しましょう。
デメリット④ 再度同様の失敗をしてしまう可能性
入ってみないとわからない類の理由が退職・転職理由であった場合は、再度同様の状況に陥ってしまう可能性も否めません。
特に人間関係などはそうと考えます。一緒に働く人全員と知り合ってから入社が叶うケースはほとんどないでしょう。そうなると、今の職場での人間関係が嫌だから、という理由は、転職先でも同じことが起こってしまう可能性がります。
入社前に同様の状況に陥らないよう、しっかりと内定後に、同じチームになる同年次程度の人との個別の面談の場を設けてもらったりして情報収集を行いましょう。
デメリット⑤ 充分な教育を与えてもらえない可能性
なまじ社会人を経験しているが故に、「社会人としての基礎はあるでしょ?できているでしょ?わからないことはもちろん教えるけど、ある程度は能動的に動いてね!」という前提で、業務をアサインしてくる企業も存在すると考えます。
もちろん、企業によっては「社会人1年目だからね、申し訳ないけどまたうちでも新人として新人教育に出てね。マンツーマンで仕事教える先輩社員もつけるからね」というスタンスの企業もあるかと思います。
”あなた”がどう感じるか、これは人それぞれと思いますが、任されたかった人には前者が良いでしょうし、丁寧な指導が欲しかった人には後者が良いのでしょう。
ただ、一般的にはまだ1年目ですので、充分な教育をしてもらえない企業への転職であった際には大部分の方は辛い思いをすることになってしまう可能性もあります。
新卒1年以内の退職・転職理由(参考例)
これまでいち人事として何名も1年以内の退職者との面接をしてきました。どれも個人的に、聞いていて一定程度止むを得ないな、と感じた、一定程度退職・転職理由として納得した理由を多少改変し紹介します。
しかし、入る前にそれってわかっていたよね、入る前にわからなかったの?、と感じることもありますので、しっかりと理由をどのように述べるかは練りに練りましょう。
営業方針が合わない
某地方金融機関・個人営業をしていた人の話
事前リサーチでわかるような気もしますが。実態は入ってみないとわからない、やってみないとわからないと言うこともありますので一定の理解はいち人事としてできました。
就労環境(働き方)がブラック
某不動産関連の営業をしていた人の話
いち人事としては自分も忙しかったので、私個人としては心に響きます。が、暇な、余裕のある仕事はないため、一体どの程度のワーク・ライフ・バランスを求めているのかはよくよく確認をしたいと考えます。
就労環境(育成面)がブラック
某メーカーの人の話
入社直後、いきなり5年目の先輩社員が辞めることとなり、1ヶ月で先輩がやっていた仕事を全て引き継がなければならなくなってしまいました。上司も忙しくなかなか仕事について聞くこともできず、聞いても詳細なことはわからずという状態でした。
自分なりに前任(辞めた先輩)の前任者を辿って仕事を聞いてみたり、他の知っていそうな人に聞いたりと出来る限りのことを行なってきました。手探りで進めてはいますが、このような状況にも関わらず相談しても上司は何もしてくれず、今の会社で働き続けることを疑問に感じ、転職活動をはじめました。
聞いているといち人事としては、新人に優しくない会社だと思います。ただ、本当にどの程度”放置・放任”されているのかはよくよく確認したいところです。1~10まで手取り足取り教えてもらうことを期待しているのか、1~6、7までは教えてもらって3、4は自分でストレッチして頑張れますと言うことなのか…。今後2年目、3年目となれば1~10まで手取り足取り教えてはもらえないということをどの程度理解しているかは気になります。
業績の急激な悪化・給与(生活)への影響
某旅行業界の営業の人の話
旅行業界への思いを捨て切れていないだろうなところから、また業界が安定してきた頃に旅行業界に戻ってしまわないか人事としては心配になりました。旅行業界への思い入れ、今後本当に異なる業界へ転職してもモチベーションを保ってやっていけるのか?については特に確認したいポイントです。
どうしても職種を変えたい(配属先不満)
某メーカーの経理・財務の人の話
どうしても職種転換(キャリアチェンジ)をしたいという話は、いち人事として比較的素直に受け止めることができます。
入社後に配属面談を通して希望外の配属先(部署・職種)になってしまった。希望の配属先ではあったもののいざ配属されてみたら思っていたのと違った。等々様々な理由でみなさんのように配属が決まった後に不満を感じ、辞めたいと思う、なんてことは多[…]
企業の急激な事業方向性転換等
某モノづくりメーカーの設計開発者の話
いち人事が社会人経験1年未満の新卒転職者に求めること
学生気分からの脱却
止むを得ない部分もありますが、新卒で就職後1年以内で転職活動をしている人と採用面接をしていると学生気分が抜けきれていないと感じる方が正直多いです。
1年以内で退職・転職活動をするまでに至った理由が極めて浅いケース、また次の会社にどのようなことを求め何を実現したいのかが表面的なケースが非常に多いです。
バイトを変えるくらい軽く考えているような人にも遭遇します。
これまでの反省
学生時代の就職活動から何故今の道を選び、何故退職・転職に至ったのかをしっかりと内省して頂きたいと思います。同じ轍を踏まないように何を学んだのか、今後どうしていきたいのかをはっきりと話せるようにして頂きたいです。
1年以内での転職活動をしている人の多くの転職理由は、その理由って転職すれば解決できるの?と疑問に感じる理由も比較的多いです。特に、「人間関係」ですが、余程の環境はさておき、ちょっとした不満程度であれば転職しても同様の不満を感じるシチュエーションに遭遇することは十分にあり得ます。
繰り返しますが、余程のブラックな理由による転職はさておき、もしまた同じようなシチュエーションに遭遇した際にどのように対応するのか?その対応は何故今できていないのか?と言うところも含めて考えて頂きたいです。
これからの覚悟
今時、「定年まで勤め上げよ」とまでは思いませんが、企業としては出来ればある程度は長く働いて欲しい、しっかりと会社、会社を通して世の中に貢献して欲しいと思っています。
完璧な企業は存在しませんので、転職が出来たとしても転職先では転職先ならではの不満を感じるかもしれません。そのような場合にどうするのか?どう対処できるのか?についても考えてください。
社会人1年目の転職には転職サイト・転職エージェントがおすすめ
企業の自社HPからの応募ももちろん良いですが、再度の就職活動ともなりますので、新卒の時とはまた異なる部分もあります。そのため、新卒の時のようにリクナビ・マイナビに代わるものとして、リクナビNEXT・Doda等の転職サイトへの登録はもちろんですが、やはり、ノウハウをたくさん持っている転職エージェントを活用することをおすすめします。
実際、私自身、いち人事として新卒1年目で転職活動をしている人の紹介を良く受けます。新卒の就職活動時とはまた異なるお作法もありますので、転職エージェントにアドバイスを求めることはマストとしてやった方が良いです。(転職エージェント経由で転職先を決めないといけないわけではないので、メインとして活用するのか、サブ(メインは転職サイト)とするのかは”あなた”次第です。)
【転職】活用必須 厳選サイト
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さいごに
新卒で1年以内の退職、転職活動は考え方としては割り切って、就職活動の再挑戦と位置付けて頑張るのが良いです。ただ、転職理由とそれに関わる部分は面接官からは非常に注意深く確認をされることになるでしょう。
就職活動時のことも根掘り葉掘り聞かれることになると考えます。しっかりと相手(企業)を納得させられるように”理由”の深堀、言語化が必要不可欠です。